ゲーム開発初心者がはじめて2Dゲームを作ってみてわかったこと
こちらの記事にも書きましたが先日「Hedgehog Drive」という2Dのゲームをリリースしました。
アプリと違ってゲーム開発は初めてということもあり、苦労したところが多かったのでその辺りをまとめてみました。
どんなゲームをつくったか
指でハリネズミを操作して画面上のセルを消していくゲームです。
ハリネズミが消したセルの数を競います。
セルをすべて消すとアイテムが出現します。最後に消したセルの色によって以下のアイテムが出現します。
- 最後に消したセルの色が紫だったら「ブドウ」
- 最後に消したセルの色が黄だったら「チーズ」
- 最後に消したセルの色が赤だったら「ニンジン」
これらのアイテムを使ってゲームを有利に進めることが出来ます。
動画を見るとどんなゲームかわかりやすいと思うのでプレイ動画を貼付けておきます。
価格は無料で広告表示もありません。
開発のきっかけとプログラミング
ちょうど一年ほど前 iOS6 の時代に、ゲーム開発の勉強をするために Objective-C で UIView を使ったゲームフレームワークを作ったのがきっかけでした。
ゲームエンジン用のサンプルアプリとしてじゃんけんゲーム、タワーディフェンスゲーム、ハリネズミのセル消しゲームなどたしか7個ぐらい作りました。中でも特に気に入っていたセル消しゲームをちゃんとゲームとしてつくってみようと思い去年の7月に開発を開始しました。ゲームの名前はハリネズミが自由に動き回ることから「Hedgehog Drive」としました。
そうこうしてるうちに9月になり、iOS7がリリースされてアップル純正の Sprite Kit という素晴らしいゲームフレームワークの存在を知りました。自分の作ったゲームフレームワークはすぐに開発中止にして「Hegehog Drive」を Sprite Kit に移植することにしました*1。
開発当初のハリネズミはこんな感じの絵でした。
開発でハマったところ
Hedgehog Driveで使った技術は以下の通りです。
- UIKit
- Core Data
- Sprite Kit
- Game Kit
一番ハマったのが UIKit の Autolayout でした。iPhone 4S発売から2年経過しているのでマルチデバイス対応するメリットがどこまであるのかはきちんと考えた方がよいかもしれません。iPhone 5以上をターゲットにしてAutolayoutを使わずに開発効率をあげるのもありな気がしました。
Autolayout でハマったときに書いた記事が以下にあります。
Sprite Kit を使った感想
必要最低限の機能しかない小さめのフレームワークのわりに、アクションを使ってサウンドを再生でるなどかゆいところに手が届く設計になっていてとても使いやすかったです。はじめて本格的なゲームプログラミングをしましたがあまりハマらずすんなりと使うことができました。
- シーンの制御
- スプライトの配置
- アクションを使ってスプライトを動かす
- サウンドの再生方法
上記がわかれば何となく作れます。Sprite Kit 関連で読んだ資料はアップル公式ドキュメント「Sprite Kit Programming Guide」です。これを読めばなんとかなります。
SpriteKitの基本的な使い方は以下の記事にまとめました。
どこまで Sprite Kit を使うのか
すべて Sprite Kit で作るのかストーリーボードを組み合わせるのかは結構迷いどころです。自分は画面遷移やスコアの表示なんかは普通にストーリーボードをつかって UIViewController + UIView で作成しました。ゲーム部分のみ Sprite Kit を使いました。Autolayout なんかを考えるとすべて Sprite Kit で開発するのは現実的ではないかもしれません。
ゲームを Sprite Kit で開発するにしてもゲーム以外の部分で UIView や UIViewController を使うのは普通のアプリ開発と変わらないです。ということで引き続き拙著「プロの力が身につく iPhone/iPadアプリケーション開発の教科書」をよろしくお願いします(Swiftに対応した改訂版が発売されました)。
Sprite Kit の説明はありませんが UIView や UIViewController、Core Data などアプリ開発の基礎を学ぶことが出来ます。
ゲームの骨格が決まったのでそれをどうアレンジするか
ゲーム性
ハリネズミを操作してセルを消すという単純なものをどうやって面白くするかはかなり悩みました。はじめ消えたセルをランダムに再生していましたがまったく面白みがありませんでした。セルを生き物のように増殖させたくてセルオートマトンをベースに創発のアプゴリズムを加えて実装しました。
セル増殖のアイデアを実装するときに役にたったのが以下の書籍です。
制限時間内にひたすらセルを消していくだけだと面白くないと感じたので、アイテムをつかってゲームを有利にすすめることが出来ないか考えました。
画面上のセルをすべて消すアイテムや時間を止めるアイテムなどいろいろ考えましたが最終的に以下の3つに決定しました。
- 残り時間をプラスするブドウ
- ハリネズミが巨大化するチーズ
- ハリネズミのスピードがアップするニンジン
個人的にはハリネズミが巨大化するチーズがお気に入りでした。巨大化チーズはたまたまプログラム開発中に間違えてハリネズミのサイズを大きくしたことで生まれました。
ゲームのユーザーインターフェース
当時 iOS7 リリース前後ということもありフラットデザインという言葉が流行していました。フラットデザインの勉強をかねてゲームをフラットな感じの UI でまとめることにしました。ゲームの UI をフラットにして大丈夫かというのが不安でフラットデザインっぽいゲームをいろいろと探しました。そのなかでDotsというゲームにかなり感銘をうけ、セルの色や UI など参考にしました。
Hedgehog Drive の開発をしていたころ iOS7 のデザインについて勉強がてら書いた記事がこちらです。
iOS7 に合ったゲームにしたかったというのが一番つよかったです。
ゲームバランスや難易度をどうやって検証したか
ゲームの実装がひととおり終わったのが12月はじめごろでした(そのときはまだ巨大化チーズはありませんでした)。娘(当時3才、現在4才)にネズミさんのゲームがあるよってことを認識してもらうことからはじめて、ちょっとした変更を加えるだびに遊んでももらいました。子供の反応は素直で面白くなければすぐにホームボタンを押されました。ゲーム中にホームボタンを押される経験を何度か繰り返しましたが改善するにつけてちゃんと最後まで遊んでくれるようになりました。巨大化チーズを見せた時の反応が良かったのでそのまま採用しました。
娘がHedgehog Driveで遊んでいる様子が以下です。
開発当初は子供向けゲームということは意識していませんでしたが、娘に遊ばせているうちに子供でも遊べるようなゲームに仕上げることが出来ました。
イラスト
本職はプログラマなので絵はあまり得意ではありません。いままでアプリのアイコンはほとんど自分でなんとか描いてきたので今回も何とかなるだろうと考えていました。描いたイラストはハリネズミと3種類のアイテムだけです。
すべてベクター画像ツールの Inkscape を使いました。
自分のような素人がイラスを描くコツは二つあります。
- イラストは円と四角の組み合わせでなんとか描ける
単純に組み合わせるだけじゃなく差分を使うとぐっと表現力が増します。三角は四角と四角の差分で描けます - サイズを何となく決めないで極力黄金比か白銀比にする
素人が感覚だけで絵が描けるわけがないので理論でカバーします
たったこれだけです。あとは自分の描きたいイラストを頭の中でイメージして Google 画像検索の中の膨大なのイラストを参考に円と四角を使って絵を描けばいけます。どうしてもうまくいかない時だけベジェをつかってみると良いとおもいます。Hedgehog Drive で描いたイラストのなかでブドウの弦の部分だけはベジェを使いました。
ハリネズミ画像の変遷
完全蛇足ですがハリネズミ画像は何度か描き直しました。変遷は以下のようになっています。
サウンド
ゲームをつくるにあたりアイデア、プログラミング、デザイン、イラストここまでは正直自分の力でなんとかなりました。ただサウンドだけはどうしても上手くいかず最終的にフリーの効果音と有料の効果音素材を購入しました。
はじめはGrage Bandを使ってなんとか効果音を作ってみたのですが、どうしても自分の作成した音に納得がいかず効果音を自力で作成するのをあきらめました。サウンドがゲームの面白さに直結するので妥協できませんでした。こんな音にしたいというイメージがあってもそれをどうやって作れば良いのか全くわかりませんでした。結局、BGMのみ自作しました。
効果音を探すにあたり参考にしたのが以下のサイトです。
On-Jin は個人開発であれば無料で音をダウンロードして使うことが出来ます。Soundstock は個人開発関係なく商用のゲームで使用する場合は500円(税抜)で気に入った音を購入することができます。セルの破裂音を On-Jin でその他効果音を Soundstock で調達しました。気に入った音、自分のイメージに近い音を探すコツは根気よくいろんな音を探して聞きまくることです。かなり地味な作業ですが良い効果音に出会うとかなりうれしくなります。
開発期間
2013年7月はじめに開発をはじめて2014年3月7日にバージョン1.0.0の承認がおりました。開発開始からリリースまで8ヶ月かかりました。京都にいた(9月まで)ころは大阪までの通勤時間(往復1時間半)と仕事の昼休み、東京に転勤してからは単身赴任中(10月から)は昼休みと仕事終わりの時間、単身赴任後(11月から)は仕事の昼休み時間を利用して開発しました。
開発費用
Soundstock から購入した効果音7種類の費用3500円プラス消費税のみです。それ以外はかかりませんでした。
ダウンロード数
iOS ゲームはすぐに埋もれると聞いてはいたものの本当に厳しくほとんどダウンロードされていません。
無料ゲームであるにも関わらずダウンロード数は2014年3月29日時点で54です。しかもダウンロードの半分が自分の知り合いというかなり厳しい結果です。
前作「即興ピアノ」のときはなんのプロモーションをしなくても毎日30-50ぐらいのダウンロードがあって今でも平均20ぐらいのダウンロードがあります。ここまで悲惨とは思いませんでした。
*1:iOS7のベータ版の調査をまじめにやっていればこんなことにならなかったわけで、当時はめちゃくちゃ凹みました